「直接請求権の署名の数が、50分の1なのか3分の1なのか混ざってしまう」「地方交付税交付金と国庫支出金のちがいが分からない」
地方自治は、中学受験の社会の公民分野で、よく出題される単元です。首長と議会の関係、直接請求権の署名数と請求先、地方の財源のしくみなどが問われます。住んでいる都道府県や市町村の取り組みと結びつけた問題も見られます。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、地方自治のしくみを整理し、まちがえやすいポイントと覚え方をまとめました。
地方自治とは
住民が、自分たちの住む地域の政治を、自分たちの手で行うことを地方自治といいます。地方自治を行う都道府県や市(区)町村を、地方公共団体(地方自治体)といいます。
地方自治は、住民の身近な問題に取り組む政治なので、「民主主義の学校」とよばれることがあります。
地方公共団体の主な仕事
- 小学校・中学校などの設置や運営
- ごみの収集や処理
- 上下水道の整備
- 消防や救急
- 道路や公園の整備
- 福祉(高齢者や子育ての支援など)
首長と地方議会
地方公共団体には、仕事を進める首長と、話し合って決める地方議会があります。
| 首長 | 地方議会 | |
|---|---|---|
| だれか | 都道府県知事、市(区)町村長 | 都道府県議会、市(区)町村議会の議員 |
| 選び方 | 住民が直接選挙で選ぶ | 住民が直接選挙で選ぶ |
| 任期 | 4年 | 4年 |
| 主な仕事 | 予算案や条例案を作る、仕事を進める | 条例を定める、予算を決める |
地方では、首長も議員も住民が直接選びます。国の内閣総理大臣は国会が指名するので、ここがちがいます。
首長と議会のおさえ合い
- 議会は、首長の不信任を決議できる
- 不信任が決議されると、首長は議会を解散できる
- 首長は、議会の議決に反対のとき、もう一度話し合うよう求めることができる
条例
地方議会が、法律の範囲内で定める、その地方公共団体だけのきまりを条例といいます。景観を守る条例、ポイすてを禁止する条例など、地域の実情に合わせたきまりが作られています。
直接請求権

住民は、一定の数の署名を集めて、地方公共団体に直接請求することができます。
| 請求の内容 | 必要な署名 | 請求先 |
|---|---|---|
| 条例の制定・改廃 | 有権者の50分の1以上 | 首長 |
| 監査の請求 | 有権者の50分の1以上 | 監査委員 |
| 議会の解散 | 原則、有権者の3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
| 首長・議員の解職(リコール) | 原則、有権者の3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
議会の解散や首長・議員の解職の請求があると、住民投票が行われ、過半数の賛成があれば解散や解職が決まります。有権者の数が多い地方公共団体では、必要な署名の数が少なくなるしくみもあります。
「人をやめさせる・議会を解散させる」は3分の1以上で選挙管理委員会へ。「条例・監査」は50分の1以上。
住民投票
地域の重要な問題について、住民の意思を問うために、条例にもとづいて住民投票が行われることがあります。市町村の合併などで行われた例があります。
地方の財源
| 財源 | 内容 |
|---|---|
| 地方税 | 住民や会社などが、地方公共団体に納める税。自主財源 |
| 地方交付税交付金 | 地方公共団体の収入の差を小さくするため、国から配られるお金。使い道は自由 |
| 国庫支出金 | 特定の仕事のために国から支出されるお金。使い道が決められている |
| 地方債 | 地方公共団体の借金 |
地方交付税交付金は「使い道自由・格差をなくす」、国庫支出金は「使い道が決まっている」。
自主財源が少なく、国からのお金や地方債にたよる地方公共団体が多いことが課題です。各地方公共団体の財源の割合は、資料集で確認してください。
地方分権
国が持っていた仕事や財源を、地方公共団体にうつしていくことを地方分権といいます。地域のことは地域で決められるようにするための取り組みです。
また、仕事を効率よく進めるために、市町村どうしが合併することもあります。
住民が政治に参加する方法
選挙や直接請求のほかにも、住民が地域の政治に参加する方法があります。
- 地方公共団体が計画を決める前に、住民から意見を集める(意見公募)
- 地域の課題について、住民どうしで話し合う会に参加する
- NPO(非営利団体)やボランティアとして、地域の活動にかかわる
住民一人ひとりが地域の課題に関心をもつことが、地方自治を支えています。
行政を見はるしくみ
住民の立場から、地方公共団体の仕事が正しく行われているかを調べるしくみもあります。オンブズマン(オンブズパーソン)制度は、住民からの苦情を受けて調査し、改善を求めるしくみで、取り入れている地方公共団体があります。監査委員による監査とあわせて、税金がむだなく使われるように見はる役割をはたしています。
よくあるまちがいと対策
- 解職請求の請求先を首長にする:解職・解散は選挙管理委員会
- 条例の制定に3分の1の署名が必要と考える:条例・監査は50分の1
- 地方交付税交付金と国庫支出金を混ぜる:使い道が自由か、決まっているか
- 知事を議会が選ぶと考える:首長は住民が直接選ぶ
家庭での覚え方のコツ
住んでいる市町村のホームページを見る
住んでいる市町村のホームページで、首長の名前や議会の情報、予算の使い道などを親子で見てみましょう。地方自治が身近なものになります。
「人は重く、ルールは軽く」で覚える
人をやめさせたり、議会を解散させたりするのは重大なことなので、署名は3分の1と多く必要、ルール(条例)や監査は50分の1と覚えると、数字を区別しやすくなります。
身近な公共サービスを数える
ごみの収集、図書館、公園など、家のまわりの公共サービスを数えてみてください。地方公共団体の仕事の多さが実感できます。
地方自治のよくある質問
何年生で学びますか?
小学校の社会では、6年生で地方の政治のしくみを学びます。中学受験向けの教材では、6年生ごろに公民分野として学ぶことが多い内容です。
国の政治とのちがいはどこで確認できますか?
国の政治のしくみは、三権分立で解説しています。内閣総理大臣と首長の選び方のちがいを、くらべて整理しましょう。
選挙の年齢も関係しますか?
はい、知事は30歳以上、市(区)町村長と地方議会の議員は25歳以上で立候補できます。選挙のしくみで確認しておきましょう。
練習問題にチャレンジ
問題1:地方議会が、法律の範囲内で定めるきまりを何といいますか。
問題2:条例の制定を請求するのに必要な署名は、有権者の何分の1以上ですか。
問題3:首長の解職を請求するときの請求先はどこですか。
問題4:地方公共団体の収入の差を小さくするために、国から配られ、使い道が自由なお金を何といいますか。
答え
問題1:条例です。
問題2:50分の1以上です。
問題3:選挙管理委員会です。
問題4:地方交付税交付金です。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
中級の問題と「要点まとめ」がついたセット(10単元・A4で62ページ)は、noteで販売しています。この単元は「社会・公民パック」に入っています。
まとめ:地方自治は「直接」がキーワード
地方自治では、首長も議員も住民が直接選び、住民は署名を集めて直接請求することもできます。直接請求権の署名数と請求先、地方交付税交付金と国庫支出金のちがいは、表にしてセットで覚えましょう。