「沖合漁業と遠洋漁業のちがいが、よく分からない」「養殖業と栽培漁業を取りちがえてしまう」
日本の水産業は、中学受験の社会の地理で、農業・工業と並んで出題される単元です。漁業の種類、よい漁場の条件、養殖業と栽培漁業、水産業がかかえる課題などが問われます。グラフを見て、どの漁業かを答える問題もよく出ます。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、漁業の種類、日本の近海がよい漁場になる理由、育てる漁業、水産業の課題を整理し、家での覚え方をまとめました。
なお、漁獲量や養殖の生産量の順位は、年によって変わることがあります。最新の数字は、お子さんが使っている教材や資料集で確認してください。
漁業の種類

漁業は、陸からのきょりや漁の仕方によって、次のように分けられます。
| 漁業の種類 | 特ちょう |
|---|---|
| 沿岸漁業 | 陸に近い海で、小さな船を使って日帰りで行う |
| 沖合漁業 | 陸から少しはなれた海で、中型の船を使い、数日がかりで行う |
| 遠洋漁業 | 遠くの海で、大型の船を使い、何か月もかけて行う |
| 養殖業 | いけすなどで、魚や貝を大きくなるまで育ててからとる |
| 栽培漁業 | たまごからかえした稚魚・稚貝を、ある程度育ててから海や川に放流し、大きくなってからとる |
沿岸は「日帰り」、沖合は「数日」、遠洋は「何か月も」。きょりと日数で区別します。
日本の近海がよい漁場になる理由
日本のまわりの海は、世界でも有数のよい漁場です。その理由は、次のとおりです。
- 暖流と寒流がぶつかる「潮目(潮境)」があり、魚のえさになるプランクトンが多い
- 大陸だな(深さ200mくらいまでの浅くてなだらかな海底)が広がり、魚が集まりやすい
日本の太平洋側では、暖流の黒潮(日本海流)と、寒流の親潮(千島海流)がぶつかります。三陸海岸の沖は、潮目のよい漁場として知られています。
また、三陸海岸の南部などのリアス海岸は、入り江が多く波がおだやかなので、養殖業に向いています。
主な漁港
日本には、たくさんの漁港があります。千葉県の銚子港、静岡県の焼津港、北海道の釧路港などは、水あげ量の多い漁港として出題されることがあります。焼津港は、遠洋漁業でとれたかつおやまぐろの水あげで知られています。
育てる漁業:養殖業と栽培漁業
とりすぎによって水産資源が減ってきたことから、「とる漁業」から「育てる漁業」への取り組みが進められています。
養殖業
いけすなどで、魚や貝を出荷できる大きさまで育てて、とる漁業です。主な養殖の例は、次のとおりです。
- ほたて貝:北海道、青森県(陸奥湾)
- かき:広島県、宮城県
- のり:佐賀県、兵庫県など(有明海などがよく知られている)
- ぶり・まだい:愛媛県、鹿児島県など
- うなぎ:鹿児島県など
栽培漁業
たまごから稚魚を育て、ある程度大きくなったら海や川に放流し、自然の中で育ったものをとる漁業です。
養殖業は「最後までいけすで育てる」、栽培漁業は「途中で海に放す」。
養殖業と栽培漁業のちがいは、入試でとてもよく問われます。「放流するかどうか」で区別しましょう。
水産業の課題
遠洋漁業の減少
1970年代に、世界の国々が、海岸から200海里(約370km)までの海で、外国の漁船がとる魚の量を制限するようになりました(現在の排他的経済水域)。そのため、遠くの海で漁をしていた日本の遠洋漁業は、大きく減りました。
また、燃料の値上がりも、遠洋漁業が減った理由の1つです。
そのほかの課題
- 水産物の輸入が増え、国内の漁業との競争がきびしくなっている
- 漁業で働く人の高齢化と、あとつぎ不足
- とりすぎや環境の変化による、水産資源の減少
こうした課題に対して、育てる漁業のほか、漁獲量の制限や、海や川の環境を守るための森づくり(魚つき林、漁師が山に木を植える取り組みなど)が行われています。
主な漁法
漁業の種類とあわせて、主な漁法(魚のとり方)も出題されることがあります。
- まき網漁業:大きな網で魚の群れを囲んでとる。いわし・さばなど、群れで泳ぐ魚に向いている
- はえなわ漁業:長いなわにたくさんのつり針をつけてとる。まぐろなど
- 底引き網漁業:海の底を網で引いてとる。かれい・たらなど、海底近くにいる魚に向いている
- 一本づり:1本ずつつり上げる。かつおの一本づりがよく知られている
- 定置網漁業:決まった場所に網をしかけて、入ってきた魚をとる。沿岸で行われる
一本づりは、魚を傷つけにくく、とりすぎも防ぎやすい漁法として知られています。漁法は、「どんな魚を、どこでとるか」とセットで覚えると、理解しやすくなります。
よくあるまちがいと対策
- 沖合漁業と遠洋漁業を取りちがえる:「沖合は数日、遠洋は何か月」と日数で区別する
- 養殖業と栽培漁業を取りちがえる:「放流するのが栽培漁業」
- 遠洋漁業が減った理由が書けない:「200海里の水域」と「燃料の値上がり」の2つで説明する
- 潮目の意味が分からない:「暖流と寒流がぶつかり、プランクトンが多い」と一言で言えるようにする
家庭での覚え方のコツ
スーパーの魚売り場を見る
スーパーの魚売り場には、「養殖」「天然」「解凍」などの表示や、産地が書かれています。「このかきは広島県産だね」「このぶりは養殖だね」と親子で確かめてみましょう。教科書の内容が、毎日の食卓とつながります。
海流を地図に書きこむ
日本の白地図に、黒潮・親潮・対馬海流・リマン海流を、暖流は赤、寒流は青で書きこんでみてください。潮目の位置と、よい漁場の関係が見えてきます。
グラフの読み取りを練習する
漁業の種類別の生産量の移り変わりを表すグラフは、入試の定番です。資料集のグラフを見て、「急に減っているのはどれ?なぜ?」と、親子で話してみましょう。
日本の水産業のよくある質問
水産業は何年生で学びますか?
小学校の社会では、5年生で日本の水産業について学びます。中学受験向けの教材では、4〜5年生ごろに地理の単元として学ぶことが多い分野です。
魚の種類と漁法も覚える必要がありますか?
まき網漁業、はえなわ漁業、底引き網漁業などの漁法が出題されることもあります。まずは漁業の種類と育てる漁業を確実にしてから、余裕があれば参考書で確認しましょう。
水産業は農業・工業とどうつながりますか?
食料自給率や輸入の問題、働く人の高齢化など、農業と共通する課題が多くあります。また、水産物をかんづめなどに加工する食料品工業ともつながっています。分野をまたいで整理すると、記述問題に強くなります。
日本の水産業の家での進め方
- 漁業の種類(沿岸・沖合・遠洋)
- 潮目と大陸だな、主な漁港
- 養殖業と栽培漁業、主な養殖の産地
- 200海里と遠洋漁業の減少、水産業の課題
練習問題にチャレンジ
問題1:小さな船を使って、陸に近い海で日帰りで行う漁業を何といいますか。
問題2:たまごからかえした稚魚をある程度育ててから、海や川に放流し、大きくなってからとる漁業を何といいますか。
問題3:遠洋漁業が大きく減った理由を、1つ答えましょう。
問題4:暖流と寒流がぶつかり、よい漁場になるところを何といいますか。
答え
問題1:沿岸漁業です。
問題2:栽培漁業です。
問題3:世界の国々が、海岸から200海里までの海で、外国の漁船がとる量を制限するようになったからです(燃料の値上がりも理由の1つです)。
問題4:潮目(潮境)です。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
まとめ:水産業は「とる漁業」と「育てる漁業」で整理する
日本の水産業は、沿岸・沖合・遠洋の「とる漁業」と、養殖業・栽培漁業の「育てる漁業」に分けて整理しましょう。潮目や大陸だながよい漁場をつくり、200海里の水域の設定で遠洋漁業が減ったことなど、理由とセットで覚えると記述問題にも対応できます。
海流やリアス海岸は日本の地形の覚え方、農業は日本の農業の特色と産地の覚え方、工業は工業地帯・工業地域の特色と覚え方で解説しています。