「農産物の産地を覚えても、すぐに忘れてしまう」「促成栽培と抑制栽培のちがいが、なかなか頭に入らない」
日本の農業は、中学受験の社会の地理で、気候と並んでよく出題される単元です。米・野菜・果物・畜産などの主な産地や、それぞれの地域でどんな工夫をしているかが問われます。
産地を一覧表で丸暗記しようとすると、量が多くて挫折しがちです。農業は、「その地域の気候や地形と、どう結びついているか」を理解すると、ぐっと覚えやすくなります。この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、日本の農業の特色と主な産地、栽培の工夫、農業がかかえる課題と、家での覚え方をまとめました。
なお、産地の順位は年によって入れかわることがあります。最新の統計は、お子さんが使っている教材や資料集で確認してください。
稲作:米づくりがさかんな地域
日本の農業の中心は、米づくり(稲作)です。米は、日本のほぼ全国で作られていますが、特に次の地域で多く作られています。
- 北海道、東北地方(秋田県・山形県・宮城県など)
- 北陸地方(新潟県など)
新潟県の越後平野、山形県の庄内平野、秋田県の秋田平野、北海道の石狩平野などは、米の産地としてよく出題されます。
これらの地域で米づくりがさかんな理由は、広い平野と、雪どけ水などの豊かな水、夏の気温の高さと昼と夜の気温差などがあげられます。また、寒さに強い品種の改良も進められてきました。
米は「北海道・東北・北陸」。広い平野と豊かな水が、米づくりを支えています。
野菜づくりの工夫
近郊農業
大都市の近くで、野菜や花などを作って、新鮮なうちに出荷する農業を近郊農業といいます。東京などの大都市に近い、茨城県や千葉県などでさかんです。輸送にかかる時間や費用をおさえられるのが利点です。
促成栽培と抑制栽培

野菜は、ほかの産地が出荷していない時期に出荷すると、高い値段で売れます。そこで、出荷の時期をずらす工夫が行われています。
- 促成栽培:暖かい気候とビニールハウスなどを利用して、野菜をふつうより早く育てて出荷する。冬でも暖かい高知平野や宮崎平野で、なすやピーマンなどの夏野菜を作る例がよく知られている
- 抑制栽培:夏でもすずしい高原の気候を利用して、ふつうより出荷の時期をおくらせる。長野県や群馬県の高原で、レタスやキャベツなどを夏に作る例がよく知られている(高原野菜)
促成栽培は「暖かさで早く」、抑制栽培は「すずしさでおそく」。どちらも出荷の時期をずらす工夫です。
果物づくり
果物は、それぞれの果物に合った気候の地域で作られています。
| 果物 | 主な産地の例 | 気候の特ちょう |
|---|---|---|
| りんご | 青森県、長野県 | すずしい気候 |
| みかん | 和歌山県、愛媛県、静岡県 | 暖かい気候、日当たりのよい斜面 |
| ぶどう、もも | 山梨県、長野県、福島県など | 雨が少なく、昼と夜の気温差が大きい盆地 |
| さくらんぼ | 山形県 | すずしい気候、盆地 |
山梨県の甲府盆地は、水はけのよい扇状地を利用して、ぶどうやももが作られていることがよく出題されます。
りんごはすずしい地域、みかんは暖かい地域。気候と結びつけて覚えます。
畜産と茶
畜産
牛やぶた、にわとりなどを育てる農業を畜産といいます。
- 乳牛(牛乳をとる):北海道が中心。根釧台地などで、すずしい気候と広い土地を生かした酪農がさかん
- 肉牛・ぶた・にわとり:北海道のほか、鹿児島県・宮崎県などの九州南部でもさかん
九州南部には、シラス台地とよばれる、火山灰が積もった水もちの悪い土地が広がっています。稲作に向かないため、畜産やさつまいもなどの畑作がさかんになりました。
茶
茶は、静岡県や鹿児島県などで多く作られています。静岡県の牧ノ原台地は、水はけのよい台地を利用した茶の産地として知られています。
日本の農業がかかえる課題
入試では、日本の農業の課題についての記述問題もよく出ます。
- 農業で働く人の高齢化と、あとつぎ不足
- 食料自給率の低さ(カロリーベースで見ると、近年は40%を下回っている)
- 外国から安い農産物が輸入されることによる競争
こうした課題に対して、次のような取り組みも行われています。
- 地産地消:その地域でとれたものを、その地域で消費する
- 6次産業化:農家が、生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)や販売(3次産業)まで行う
- ブランド化:地域の名前をつけて、品質の高さを売りにする
よくあるまちがいと対策
- 促成栽培と抑制栽培を取りちがえる:「促成=早く」「抑制=おさえる(おそく)」と漢字の意味で覚える
- 産地を一覧で丸暗記して忘れる:気候区分の地図と重ねて、「なぜその地域なのか」を確認する
- 平野・台地・盆地の名前があいまい:白地図に書きこんで覚える
- 課題を聞かれて、理由が書けない:「高齢化→働く人が減る→耕されない土地が増える」のように、つながりで説明する
家庭での覚え方のコツ
スーパーで産地を見る
いちばん身近な教材は、スーパーの野菜・果物売り場です。りんごの産地、冬に売られているピーマンの産地、夏のレタスの産地などを親子で確かめてみてください。教科書の内容が、実際の生活とつながる瞬間です。
白地図に農産物の絵をかく
日本の白地図に、米、りんご、みかん、牛などの絵をかきこんで、自分だけの農業地図を作りましょう。気候区分の地図と並べると、「すずしい地域にりんご、暖かい地域にみかん」という関係が見えてきます。
気候の単元とセットで学ぶ
農業は、気候の単元とセットで学ぶと、理解が深まります。「瀬戸内は雨が少ないから、ため池がある」「高原は夏もすずしいから、抑制栽培ができる」というように、気候と農業を結びつけて説明できるようにしましょう。
日本の農業のよくある質問
農産物の生産量の順位まで覚える必要がありますか?
上位の県(特に1位の県)は、よく出題されるので覚えておくと安心です。ただし、順位は年によって入れかわることがあります。最新の資料集やお子さんの教材で確認し、「なぜその県で多いのか」とセットで覚えましょう。
水産業や林業も出題されますか?
はい、農業とあわせて、水産業(漁業)や林業も出題されます。水産業では、遠洋漁業・沖合漁業・沿岸漁業のちがいや、養殖業・栽培漁業などがよく問われます。農業と同じように、地域の自然条件と結びつけて覚えましょう。
農業は何年生で学びますか?
小学校の社会では、5年生で日本の農業や水産業について学びます。中学受験向けの教材では、4〜5年生ごろに地理の単元として学ぶことが多い分野です。
日本の農業の家での進め方
塾なしで進める場合は、次の順番がおすすめです。
- 日本の気候区分を確認する
- 稲作と、米づくりがさかんな地域
- 近郊農業・促成栽培・抑制栽培
- 果物・畜産・茶の主な産地
- 日本の農業の課題と取り組み
1日20〜30分、白地図に書きこみながら進めると、地名と産物が結びつきます。
練習問題にチャレンジ
問題1:高知平野や宮崎平野で、冬に夏野菜を作って出荷する栽培方法を何といいますか。
問題2:長野県や群馬県の高原で、レタスやキャベツを夏に作って出荷できるのは、どのような気候を利用しているからですか。
問題3:大都市の近くで、野菜などを作って新鮮なうちに出荷する農業を何といいますか。
問題4:九州南部のシラス台地で、稲作より畜産や畑作がさかんになった理由を説明しましょう。
答え
問題1:促成栽培です。冬でも暖かい気候と、ビニールハウスなどを利用しています。
問題2:夏でもすずしい高原の気候を利用しています。平地で作りにくい夏の時期に出荷できるので、高い値段で売れます(抑制栽培)。
問題3:近郊農業です。茨城県や千葉県などでさかんです。
問題4:シラス台地は火山灰が積もった土地で、水もちが悪く、稲作に向かないからです。
答え合わせでは、用語を答えるだけでなく、「なぜその地域でその農業がさかんなのか」を、気候や地形の言葉を使って説明できるかを確かめましょう。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
まとめ:農業は「気候・地形」と結びつけて覚える
日本の農業は、その地域の気候や地形と深く結びついています。米は北海道・東北・北陸、野菜は促成栽培と抑制栽培で出荷時期をずらし、果物はそれぞれに合った気候の地域で作られます。産地を丸暗記するのではなく、「なぜその地域なのか」を理由とセットで覚えましょう。
気候の見分け方は日本の気候と雨温図の見分け方、社会のほかの分野は時代の流れから覚える歴史の勉強の順番で解説しています。楽しく学べる本は小学生の中学受験におすすめの学習漫画ランキングも参考にしてください。