「工業地帯の名前は覚えたけれど、どこが何の工業がさかんなのか区別できない」「工業の問題で、グラフを見て工業地帯を答える問題が苦手」
日本の工業は、中学受験の社会の地理で、農業と並んでよく出題される単元です。工業地帯・工業地域の場所と特色、工業の種類、日本の工業がかかえる課題などが問われます。グラフや表を読み取る問題が多いのも特ちょうです。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、工業の種類、主な工業地帯・工業地域の特色、日本の工業の特ちょうと課題、伝統工業を整理し、家での覚え方をまとめました。
なお、工業地帯ごとの出荷額の順位や割合は、年によって変わることがあります。最新の数字は、お子さんが使っている教材や資料集で確認してください。
工業の種類
工業は、作るものによって、いくつかの種類に分けられます。
| 工業の種類 | 主なもの |
|---|---|
| 機械工業 | 自動車、電気機械、精密機械など |
| 金属工業 | 鉄鋼、アルミニウムなど |
| 化学工業 | 石油製品、薬品、プラスチックなど |
| 食料品工業 | パン、かんづめ、飲料など |
| せんい工業 | 糸、布、衣類など |
かつての日本では、せんい工業が中心でしたが、その後、鉄鋼などの重化学工業が発展し、現在は機械工業がいちばん大きな割合をしめています。
太平洋ベルト
関東地方から九州地方北部にかけての、太平洋側を中心とした帯のような地域を太平洋ベルトといいます。日本の主な工業地帯・工業地域の多くが、この地域に集まっています。
太平洋ベルトに工業が集まった理由は、次のとおりです。
- 平野が多く、工場を建てる土地がある
- 港が多く、原料の輸入や製品の輸出に便利
- 人口が多く、働く人が集まりやすい
- 製品を売る大都市が近い
工業は「港・平野・人口」がそろう太平洋ベルトに集まっています。
主な工業地帯・工業地域

中京工業地帯(愛知県・三重県)
自動車を中心とした機械工業の割合がとても高い工業地帯です。愛知県豊田市は、自動車の関連工場が集まる都市として知られています。製造品出荷額は、工業地帯・工業地域の中で最も多くなっています。
阪神工業地帯(大阪府・兵庫県)
ほかの工業地帯に比べて、金属工業の割合が高いのが特ちょうです。また、中小工場が多いことでも知られています。
京浜工業地帯(東京都・神奈川県)
機械工業が中心です。東京には出版社や新聞社が多く集まっているため、印刷業がさかんなことも特ちょうです。
瀬戸内工業地域(岡山県・広島県・山口県・香川県・愛媛県など)
瀬戸内海の沿岸に広がる工業地域です。岡山県倉敷市の水島地区などに、石油化学コンビナート(石油を原料にする工場が集まったところ)があり、化学工業の割合が高くなっています。
関東内陸工業地域(栃木県・群馬県・埼玉県)
海に面していない内陸の工業地域です。高速道路が整備されたことで、高速道路ぞいに工業団地がつくられ、自動車や電気機械などの機械工業が発展しました。
北九州工業地帯(福岡県)
1901年に操業を始めた官営八幡製鉄所をきっかけに、鉄鋼業を中心に発展しました。現在は、ほかの工業地帯に比べて出荷額は小さく、「北九州工業地域」とよばれることもあります。
大工場と中小工場
日本の工場は、働く人の数が300人以上の大工場と、300人未満の中小工場に分けられます。
- 工場の数:中小工場が大部分(99%以上)をしめる
- 働く人の数:中小工場で働く人のほうが多い
- 出荷額:大工場の割合が大きい
大工場は数が少なくても、1つの工場の生産額が大きいので、出荷額では大きな割合をしめます。この「数と出荷額のちがい」は、グラフの読み取り問題でよく出ます。
工場の数は中小工場が圧倒的に多いが、出荷額は大工場の割合が大きい。
日本の工業の特ちょうと課題
加工貿易
日本は、石油や鉄鉱石などの資源が少ない国です。そのため、原料を外国から輸入し、それを加工して製品をつくり、輸出する「加工貿易」によって工業を発展させてきました。
産業の空洞化
近年は、人件費の安い外国に工場を移す企業が増えました。その結果、国内の工場が減り、働く場所が少なくなることを「産業の空洞化」といいます。
環境への配慮
工業の発展にともなって、かつては公害が大きな問題になりました。四大公害病(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく)は、歴史・公民の分野ともつながる重要な内容です。
伝統工業
昔から受けつがれてきた技術で、地域の材料を使ってつくる工業を伝統工業といいます。
- 南部鉄器(岩手県)
- 輪島塗(石川県)
- 西陣織(京都府)
- 有田焼(佐賀県)
伝統工業は、あとつぎ不足が課題になっています。
よくあるまちがいと対策
- 中京・阪神・京浜の特色を取りちがえる:「中京=自動車、阪神=金属・中小工場、京浜=印刷」と一言で覚える
- 工場の数と出荷額の割合を混同する:グラフの項目名を必ず確認する
- 太平洋ベルトに工業が集まる理由が書けない:「港・平野・人口」の3つで説明する
- 伝統工業の産地を取りちがえる:白地図に書きこんで覚える
家庭での覚え方のコツ
身の回りの製品の産地を見る
家にある製品の箱やラベルを見て、どこで作られたかを調べてみましょう。「この車は愛知県の会社」「この食器は有田焼」など、身近なものと工業地帯を結びつけると、覚えやすくなります。
白地図に色をぬる
日本の白地図に、太平洋ベルトと主な工業地帯・工業地域を色分けしてぬりましょう。それぞれに、特色を一言ずつ書きこむと、自分だけの工業地図ができます。
グラフの読み取りを練習する
工業の問題では、工業地帯ごとの出荷額の割合を示した帯グラフなどがよく出ます。資料集のグラフを見て、「機械の割合がいちばん高いのはどこ?」「金属の割合が高いのは?」と、親子でクイズにしてみてください。
日本の工業のよくある質問
工業は何年生で学びますか?
小学校の社会では、5年生で日本の工業について学びます。中学受験向けの教材では、4〜5年生ごろに地理の単元として学ぶことが多い分野です。
工業地帯の出荷額の順位は覚えたほうがいいですか?
中京工業地帯が最も多いことは、よく出題されるので覚えておきましょう。そのほかの順位や割合は年によって変わることがあるので、最新の資料集で確認し、「なぜその工業がさかんなのか」とセットで覚えるのがおすすめです。
貿易の問題も出ますか?
はい、工業とあわせて、日本の主な輸出品・輸入品や、貿易相手国も出題されます。加工貿易の考え方を理解しておくと、貿易の問題も整理しやすくなります。
日本の工業の家での進め方
- 工業の種類
- 太平洋ベルトと、工業が集まる理由
- 主な工業地帯・工業地域の特色
- 大工場と中小工場、加工貿易、産業の空洞化
- 公害と伝統工業
練習問題にチャレンジ
問題1:自動車工業を中心に、製造品出荷額が最も多い工業地帯はどこですか。
問題2:石油化学コンビナートが多く、化学工業の割合が高い工業地域はどこですか。
問題3:原料を輸入し、加工した製品を輸出する貿易を何といいますか。
問題4:日本の工場の数で、大部分をしめているのは大工場と中小工場のどちらですか。
答え
問題1:中京工業地帯です。
問題2:瀬戸内工業地域です。
問題3:加工貿易です。
問題4:中小工場です。ただし、出荷額では大工場の割合が大きくなります。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
まとめ:工業は「場所・特色・理由」をセットで覚える
日本の工業は、港・平野・人口がそろう太平洋ベルトに集まり、中京は自動車、阪神は金属と中小工場、京浜は印刷、瀬戸内は化学、関東内陸は高速道路ぞいの機械工業が特色です。場所と特色を、その理由とセットで覚えると、グラフの問題にも対応できます。
農業は日本の農業の特色と産地の覚え方、地形は日本の地形(山地・川・平野)の覚え方、公害と関わる公民は憲法・三権分立から時事問題までの覚え方で解説しています。