「南部鉄器や輪島塗は聞いたことがあるけれど、どの県のものか覚えられない」「伝統工業と地場産業のちがいが分からない」
伝統的工芸品は、中学受験の社会の地理で、地方別の学習の中でくり返し出題されるテーマです。品目と都道府県を結びつける問題、伝統工業が発達した理由を答える問題、伝統工業がかかえる課題を問う問題などが出ます。ばらばらに覚えるより、種類ごとにまとめると整理しやすくなります。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、伝統的工芸品を種類別に整理し、覚え方をまとめました。指定されている品目の数は変わることがあるので、最新の情報は資料集で確認してください。
伝統的工芸品とは
昔から受けつがれてきた技術で作られる工業を、伝統工業(伝統産業)といいます。そのうち、法律にもとづいて国(経済産業大臣)が指定したものを、伝統的工芸品といいます。
指定されるには、次のような条件があります。
- 主に日常の生活で使われるもの
- 主な部分が手作り
- 伝統的な技術や技法で作られている
- 伝統的に使われてきた原材料を使っている
- 一定の地域で、まとまった産地を形成している
伝統的工芸品は「日常生活で使う」「手作り」「伝統の技術と原材料」「産地がまとまっている」もの。
種類別の代表的な伝統的工芸品

| 種類 | 伝統的工芸品(都道府県) |
|---|---|
| 織物 | 西陣織(京都府)、結城紬(茨城県・栃木県)、博多織(福岡県) |
| 染物 | 京友禅(京都府)、加賀友禅(石川県)、琉球びんがた(沖縄県) |
| 陶磁器 | 伊万里・有田焼(佐賀県)、九谷焼(石川県)、瀬戸染付焼(愛知県)、益子焼(栃木県)、信楽焼(滋賀県)、備前焼(岡山県) |
| 漆器 | 輪島塗(石川県)、会津塗(福島県)、津軽塗(青森県) |
| 金工品 | 南部鉄器(岩手県)、高岡銅器(富山県) |
| 和紙 | 美濃和紙(岐阜県)、越前和紙(福井県) |
| その他 | 天童将棋駒(山形県)、博多人形(福岡県)、江戸切子(東京都)、箱根寄木細工(神奈川県) |
石川県は「輪島塗・加賀友禅・九谷焼」と3つ覚えておきましょう。伝統的工芸品の多い県として出題されやすい県です。
瀬戸染付焼の産地である愛知県瀬戸市は、焼き物を表す「せともの」という言葉の由来になっています。
雪国で伝統工業が発達した理由
北陸地方や東北地方には、伝統的工芸品が多くあります。
- 冬は雪が深く、農作業ができない
- そのため、冬の間の家の中での副業として、ものづくりが発達した
- 長い年月の中で、技術が受けつがれ、すぐれた工芸品が生まれた
例題1:北陸地方や東北地方で、伝統工業がさかんになった理由を答えましょう。
冬は雪が多く農作業ができないため、農家の冬の副業として、家の中でできるものづくりが発達したからです。
地場産業
その地域の原料や技術を生かし、地域に根づいて発達してきた産業を、地場産業といいます。伝統的工芸品だけでなく、現代の製品をつくる産業もふくまれます。
| 地場産業 | 都道府県 |
|---|---|
| めがねフレーム | 福井県鯖江市 |
| 金属洋食器 | 新潟県燕市 |
| タオル | 愛媛県今治市 |
| 筆 | 広島県熊野町 |
地場産業は「地域に根づいた産業」。伝統的工芸品に限らず、めがねやタオルなども地場産業です。
地場産業の中には、伝統的な技術をもとに発展してきたものもあります。
伝統工業の課題
- 後継者不足:技術を身につけるのに長い年月がかかり、若い働き手が少ない
- 働く人の高齢化
- 安い大量生産の製品や、外国からの輸入品との競争
- 生活様式の変化で、使われる機会が減っている
新しい取り組み
- 伝統の技術を生かして、今の生活に合った新しいデザインの製品を作る
- 海外に向けて発信し、輸出する
- 工房の見学や体験を受け入れ、観光と結びつける
- インターネットで直接販売する
例題2:伝統工業の課題を1つ挙げ、それに対する取り組みを答えましょう。
課題は後継者不足です。取り組みとして、若い人が技術を学べる研修を行ったり、新しいデザインの製品を作って関心を集めたりしています。
伝統マーク
伝統的工芸品には、国が指定した伝統的工芸品であることを示す「伝統証紙」をはることができます。この証紙には、伝統マークがえがかれています。製品を選ぶときの目印になります。
よくあるまちがいと対策
- 南部鉄器を南部地方(九州など)と考える:南部鉄器は岩手県
- 有田焼と九谷焼の県を混ぜる:有田焼は佐賀県、九谷焼は石川県
- 地場産業を伝統的工芸品だけと考える:めがねやタオルなどもふくむ
- 伝統工業が雪国に多い理由を書けない:冬の副業として発達した
家庭での覚え方のコツ
家の中の工芸品を探す
家にある焼き物の茶わんや、漆ぬりのはし、てぬぐいなどの産地を確かめてみましょう。身近なものから覚えると、記憶に残ります。
種類ごとに地図にまとめる
白地図に、焼き物は青、漆器は赤、などと色分けして工芸品を書きこんでみてください。北陸や東北に多いことが目で分かります。
旅行先で体験する
旅行先で、焼き物や和紙づくりの体験をすると、その工芸品と産地が強く印象に残ります。
伝統的工芸品のよくある質問
何年生で学びますか?
小学校の社会では、4年生で県内の伝統や文化、地場産業を、5年生で日本の工業を学びます。中学受験向けの教材では、5年生ごろに地方別の地理とあわせて学ぶことが多い内容です。
地方別の学習とどうつながりますか?
各地方の伝統的工芸品は、北海道地方・東北地方、関東地方・中部地方などでも解説しています。
工業の単元とも関係がありますか?
はい、伝統工業は、大工場で大量生産する近代工業とくらべて出題されることがあります。日本の工業もあわせて確認しましょう。
練習問題にチャレンジ
問題1:岩手県の伝統的工芸品で、鉄でできたなべややかんなどを何といいますか。
問題2:輪島塗・加賀友禅・九谷焼の産地は何県ですか。
問題3:福井県鯖江市でさかんな地場産業は何ですか。
問題4:伝統工業がかかえる課題を1つ答えましょう。
答え
問題1:南部鉄器です。
問題2:石川県です。
問題3:めがねフレームの生産です。
問題4:後継者不足(働く人の高齢化、安い製品との競争など)です。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
まとめ:伝統的工芸品は「種類別」と「雪国の副業」
伝統的工芸品は、織物・染物・陶磁器・漆器・金工品・和紙などの種類別に、代表的な品目と都道府県をセットで覚えましょう。北陸や東北に多いのは、冬の副業として発達したからです。後継者不足などの課題と、新しいデザインや海外への発信などの取り組みもあわせて押さえておきましょう。