「円が転がる問題になると、どこを通るのか想像できない」「通過した部分の面積で、角のところをいつも数えまちがえる」
図形の移動は、中学受験の算数で、上位校から中堅校まで広く出題される単元です。円が図形のまわりを転がる問題、図形を回転させる問題、図形をすべらせる問題など、頭の中で動きを想像する力が問われます。
むずかしそうに見えますが、使う知識は「長方形」と「おうぎ形」の長さと面積だけです。この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、図形の移動の種類、転がる円の問題、回転の問題の考え方を整理し、家での教え方をまとめました。
図形の移動の3つの種類
図形を、形と大きさを変えずに動かす方法は、次の3つです。
- 平行移動:図形を、一定の向きに、一定のきょりだけずらす
- 回転移動:図形を、ある点を中心にして、一定の角度だけ回す
- 対称移動:図形を、ある直線を折り目にして、うら返す
移動しても、図形の形と大きさは変わりません。変わるのは「位置」と「向き」だけです。
入試では、これらの移動で「図形が通過した部分」の面積や、「ある点が動いたあと」の長さを求める問題がよく出ます。
円が長方形の外側を転がる問題

円が長方形の外側を、辺からはなれずに1周するとき、円の中心は、辺から半径分だけはなれたところを通ります。
中心の通り道は、次の2つに分けて考えます。
- 辺にそった直線部分:長さの合計は、長方形のまわりの長さと同じ
- 角の部分:中心角90°のおうぎ形の弧が4つ。合わせると、半径が「転がる円の半径」の円1つ分
外側を1周する円の中心の通り道=長方形のまわりの長さ+(転がる円の半径の円の円周)
例題1:たて5cm、横8cmの長方形の外側を、半径1cmの円が辺にそって1周します。円の中心が動いたきょりを求めましょう。
直線部分の合計は、長方形のまわりの長さで(5+8)×2=26cmです。角の部分は、半径1cmの円1つ分の円周で、2×3.14=6.28cmです。合わせて、26+6.28=32.28cmです。
円が通過した部分の面積
円が通過した部分は、辺にそった細長い長方形と、角のおうぎ形に分けて考えます。円の直径が帯のはばになります。
例題2:例題1で、円が通過した部分の面積を求めましょう。
帯のはばは直径の2cmです。直線部分は、長さの合計26cm×はば2cm=52cm²です。角の部分は、半径2cmで中心角90°のおうぎ形が4つで、合わせると半径2cmの円1つ分です。2×2×3.14=12.56cm²です。合計は、52+12.56=64.56cm²です。
通過した部分の面積では、角のおうぎ形の半径は「円の直径」になります。
円が長方形の内側を転がる問題
円が長方形の内側を、辺からはなれずに1周するとき、中心の通り道は、元の長方形より小さい長方形になります。角では円が曲がれないので、おうぎ形はできません。
例題3:たて5cm、横8cmの長方形の内側を、半径1cmの円が辺にそって1周します。円の中心が動いたきょりを求めましょう。
中心は、各辺から1cmずつ内側を通ります。中心が通る長方形は、たて5-2=3cm、横8-2=6cmです。まわりの長さは、(3+6)×2=18cmです。
内側を転がる問題で、円が通過した部分の面積を求めるときは、角に円が届かない「すき間」ができることに注意しましょう。
図形を回転させる問題
図形をある点を中心に回転させると、図形の各点は、その点を中心とした円の弧をえがきます。
例題4:長さ6cmの棒の一方のはしを中心にして、棒を90°回転させました。棒が通過した部分の面積を求めましょう。
棒が通過した部分は、半径6cm、中心角90°のおうぎ形になります。6×6×3.14÷4=28.26cm²です。
三角形や長方形を回転させる問題では、「回転の中心からいちばん遠い点」と「いちばん近い点」がそれぞれえがく弧に注目すると、通過した部分の形が分かります。
よくあるまちがいと対策
- 外側を転がる問題で、角のおうぎ形を忘れる:中心の通り道を図にかきこむ
- 通過した部分の面積で、角のおうぎ形の半径を円の半径にしてしまう:半径は「円の直径」
- 内側を転がる問題でも、角におうぎ形をかいてしまう:内側では角に届かない
- 回転の中心をまちがえる:問題文の「どの点を中心に」に線を引く
家庭での教え方のコツ
コインを転がしてみる
本や箱のまわりに、コインを転がしてみましょう。角のところでコインがくるっと回りこむようすを見ると、おうぎ形ができる理由がよく分かります。中心に印をつけておくと、通り道がたどりやすくなります。
通り道を色ペンでなぞる
問題の図に、円の中心の通り道を色ペンでかきこむ習慣をつけてください。直線部分と角の部分を色分けすると、式が立てやすくなります。
図をかく練習を大切にする
図形の移動は、図がかければ半分解けたようなものです。答えが合っていても、図をきれいにかけているかを親子で確認しましょう。
図形の移動のよくある質問
何年生で学びますか?
中学受験向けの教材では、5〜6年生ごろに学ぶことが多い単元です。円とおうぎ形の長さと面積が使えることが前提になります。
正方形や三角形が転がる問題も出ますか?
はい、正方形や正三角形が直線の上を転がるときに、頂点が動いたあとの長さを求める問題もよく出ます。この場合も、頂点はおうぎ形の弧をえがくので、「何回転がって、それぞれ半径と中心角がいくつか」を順番に調べます。
点が動く問題とはちがいますか?
図形の上を点が動き、面積がどう変わるかを考える問題は「点の移動」として別に学びます。点の移動とグラフの読み方で解説しています。
図形の移動の家での進め方
- 平行移動・回転移動・対称移動の意味
- 円が外側を転がるときの中心の通り道(例題1)
- 円が通過した部分の面積(例題2)
- 円が内側を転がる問題(例題3)
- 図形を回転させる問題(例題4)
練習問題にチャレンジ
問題1:1辺4cmの正方形の外側を、半径1cmの円が辺にそって1周します。円の中心が動いたきょりを求めましょう。
問題2:問題1で、円が通過した部分の面積を求めましょう。
問題3:1辺6cmの正方形の内側を、半径1cmの円が辺にそって1周します。円の中心が動いたきょりを求めましょう。
問題4:長さ4cmの棒の一方のはしを中心にして、棒を180°回転させました。棒が通過した部分の面積を求めましょう。
答え
問題1:4×4+2×3.14=16+6.28=22.28cmです。
問題2:直線部分は16×2=32cm²、角の部分は半径2cmの円1つ分で12.56cm²です。合計44.56cm²です。
問題3:中心は1辺4cmの正方形を通るので、4×4=16cmです。
問題4:半径4cmの半円になるので、4×4×3.14÷2=25.12cm²です。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
まとめ:図形の移動は「直線部分」と「おうぎ形」に分ける
図形の移動の問題は、通り道や通過した部分を、直線部分(長方形)と角の部分(おうぎ形)に分けると、必ず計算できる形になります。外側を転がると角におうぎ形ができ、内側では角に届かないことを押さえ、図をかいてから式を立てましょう。
計算のもとになる公式は円とおうぎ形の求め方、面積の基本は図形の面積の求め方で解説しています。算数全体の立て直しは中学受験の算数が苦手な原因と立て直し方も参考にしてください。