「てこの計算問題になると、どこに何をかければいいか分からなくなる」「支点・力点・作用点の区別があいまいなまま進んでしまった」
てこは、中学受験の理科の「力のはたらき」の分野で、もっともよく出題される単元の1つです。小学校では6年生で学びますが、中学受験では、おもりがいくつもつるされた問題や、棒の重さを考える問題など、計算力が必要な問題が多く出ます。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、てこの基本(支点・力点・作用点)、身近な道具の分類、つり合いの計算、支点にかかる力や棒の重さを考える問題と、家での教え方をまとめました。
てこの基本:支点・力点・作用点
てこは、棒の1点を支えにして、小さな力で大きな力を生み出したり、力の向きを変えたりするしくみです。てこには、次の3つの点があります。
- 支点:棒を支えている点
- 力点:力を加える点
- 作用点:ものに力がはたらく点
てこでは、支点から力点までのきょりが長いほど、また、支点から作用点までのきょりが短いほど、小さな力で作業ができます。
力点は支点から遠いほど、作用点は支点に近いほど、小さな力ですみます。
身近な道具は3つの種類に分けられる
身の回りの道具には、てこのしくみが使われています。3つの点のどれが真ん中にあるかで、3つの種類に分けられます。
| 真ん中にある点 | 道具の例 | 特ちょう |
|---|---|---|
| 支点 | くぎぬき、はさみ、ペンチ | 力点と作用点のきょりの取り方で、大きな力を出せる |
| 作用点 | せんぬき、穴あけパンチ | いつも小さな力で大きな力を出せる |
| 力点 | ピンセット、和ばさみ | 力は大きくならないが、細かい作業がしやすい |
ピンセットのように、力点が真ん中にある道具は、加えた力より作用点にはたらく力が小さくなります。そのかわり、力を細かく調節できるので、小さなものをつまむのに向いています。
道具を覚えるときは、実物を手に取って「どこを持って(力点)、どこで切る・はさむ(作用点)、どこが回る(支点)」を確かめるのがいちばんです。
つり合いの計算:おもさ×きょり
てこの計算問題の基本は、「おもさ×支点からのきょり」が左右で等しいとき、てこは水平につり合う、という関係です。この「おもさ×きょり」を、てこを回転させるはたらき(モーメント)といいます。
例題1:棒の中央を支点にして、左に20cmのところに30gのおもりをつるしました。右に15cmのところに何gのおもりをつるすと、棒は水平につり合いますか。棒の重さは考えません。

- 左:30×20=600
- 右:□×15=600
- □=600÷15=40g
てこは「おもさ×支点からのきょり」が左右で同じとき、水平につり合います。
おもりが2つ以上あるとき
例題2:棒の中央を支点にして、左に30cmのところに20g、左に10cmのところに10gのおもりをつるしました。右に35cmのところに何gのおもりをつるすとつり合いますか。
おもりが2つ以上あるときは、同じ側の「おもさ×きょり」をたし合わせます。
- 左:20×30+10×10=600+100=700
- 右:□×35=700
- □=700÷35=20g
支点にかかる力
例題3:例題2で、棒がつり合っているとき、支点(棒をつるしているひも)には何gの力がかかっていますか。
支点は、棒にかかるすべてのおもりを支えています。棒の重さを考えないとき、支点にかかる力は、おもりの重さの合計です。
20+10+20=50gです。
「支点にかかる力」を聞かれたら、上向きの力(支点やばねばかりが支える力)と、下向きの力(おもりの重さ)がつり合っている、と考えましょう。
棒の重さを考える問題
ここまでは、棒の重さを考えない問題でした。入試では、棒の重さを考える問題もよく出ます。
太さが一様な(どこも同じ太さの)棒の重さは、棒の真ん中に集まっていると考えます。この点を「重心」といいます。
例題4:長さ100cm、重さ60gの太さが一様な棒があります。左はしから40cmのところを支点にして支えます。左はしに何gのおもりをつるすと、棒は水平につり合いますか。
棒の重さ60gは、真ん中(左はしから50cm)にかかります。支点は左はしから40cmなので、棒の重さは支点から右に10cmのところにかかっています。
- 右:60×10=600
- 左:□×40=600
- □=600÷40=15g
このとき、支点にかかる力は、60+15=75gです。
太さが一様な棒の重さは、棒の真ん中にかかると考えます。
よくあるまちがいと対策
- きょりを、棒のはしからはかってしまう:きょりは必ず「支点から」はかる
- おもりが2つあるとき、片方だけで計算する:同じ側の「おもさ×きょり」をすべてたす
- 支点にかかる力を求め忘れる、または棒の重さを入れ忘れる:上向きの力と下向きの力のつり合いを書き出す
- 道具の分類で、支点と作用点を取りちがえる:道具の絵に、3つの点を書きこんで覚える
家庭での教え方のコツ
定規と硬貨でてこを作る
30cmの定規の真ん中にえんぴつを置いて支点にし、両側に10円玉をのせてみましょう。1枚と2枚をのせるとき、どの位置ならつり合うかを探すと、「重いほうは支点に近く」なることが体験で分かります。
身近な道具を観察する
はさみ、せんぬき、ピンセットなど、家にある道具を集めて、支点・力点・作用点に色シールをはってみてください。どの点が真ん中にあるかを自分の目で確かめると、表を丸暗記するより確実に覚えられます。
計算は表に整理する
おもりが多い問題は、「おもさ」「支点からのきょり」「かけた数」の表を左右に分けて書くと、計算もれを防げます。
てこのよくある質問
「モーメント」という言葉は覚えないといけませんか?
小学校の教科書では、「おもりの重さ×支点からのきょり」として学びます。中学受験の参考書では「モーメント」という言葉を使うこともありますが、言葉よりも、「おもさ×きょり」が左右で等しいとつり合う、という関係を使いこなせることが大切です。
てこの計算が苦手な子は、何から練習すればいいですか?
まずは、おもりが左右に1つずつの問題を、たくさん解いてください。次に、片側におもりが2つある問題、そのあと支点にかかる力、棒の重さ、と順番に条件を増やしていきます。いきなり棒の重さのある問題に進むと、混乱しやすくなります。
てこは何年生で学びますか?
小学校の理科では、6年生で「てこの規則性」として学びます。中学受験向けの教材では、5年生ごろに学ぶことが多く、6年生で滑車や輪軸と組み合わせた応用問題に取り組みます。
てこの家での進め方
塾なしで進める場合は、次の順番がおすすめです。
- 支点・力点・作用点と、身近な道具の3つの種類
- おもりが左右に1つずつのつり合い(例題1)
- おもりが2つ以上のつり合い(例題2)
- 支点にかかる力(例題3)
- 棒の重さを考える問題(例題4)
1日2〜3問、図をかいて、支点からのきょりを書きこんでから計算しましょう。
練習問題にチャレンジ
問題1:棒の中央を支点にして、左に15cmのところに40gのおもりをつるしました。右に20cmのところに何gのおもりをつるすとつり合いますか(棒の重さは考えません)。
問題2:棒の中央を支点にして、左に20cmのところに30gのおもりをつるしました。右に20gのおもりをつるしてつり合わせるには、支点から右に何cmのところにつるせばよいですか(棒の重さは考えません)。
問題3:棒の中央を支点にして、左に30cmのところに10g、左に10cmのところに20gのおもりをつるしました。右に25gのおもりをつるしてつり合わせるには、支点から右に何cmのところにつるせばよいですか(棒の重さは考えません)。
答え
問題1:40×15=600、600÷20=30gです。
問題2:30×20=600、600÷20=30cmです。
問題3:左は10×30+20×10=500、500÷25=20cmです。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
中級の問題と「要点まとめ」がついたセット(10単元・A4で62ページ)は、noteで販売しています。この単元は「理科・計算パック」に入っています。
まとめ:てこは「おもさ×きょり」で考える
てこは、支点・力点・作用点の位置関係と、「おもさ×支点からのきょり」が左右で等しいとつり合う、という2つが基本です。おもりが増えても、棒の重さが加わっても、この関係を図に書きこんで整理すれば解けます。
計算に使う比の考え方は比の性質・比例配分・連比・逆比の解き方、ばねの問題はばねののびと長さの計算で解説しています。理科の参考書選びは塾無しで目指す中学受験のおすすめ参考書ランキングも参考にしてください。