「船の速さと川の流れの速さが出てきたとたん、何をたして何をひくのか分からなくなる」
流水算は、速さの単元の中でも「速さが2つ重なる」ところが難しく感じられる問題です。でも、仕組みが分かってしまえば、使う式はほんの数本だけ。しかも、そのうちの1つは和差算そのものです。
この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、流水算の基本の考え方、上り・下りの速さの関係、和差算を使った逆算の問題、流れの速さが変わる応用問題、家での教え方をまとめました。旅人算や和差算をひと通り学んだあとに読むと、つながりが見えやすくなります。
流水算とは?どんな問題か
流水算は、川を上ったり下ったりする船の速さや時間、道のりを求める問題です。
登場する速さは4つあります。
- 静水での速さ:流れのない水の上で、船が進む速さ(船そのものの力)
- 流れの速さ:川の水が流れる速さ
- 下りの速さ:川の流れと同じ向きに進むときの速さ
- 上りの速さ:川の流れに逆らって進むときの速さ
この4つの関係が分かれば、流水算の問題は解けます。
基本の関係:下りは「たす」、上りは「ひく」

川を下るときは、船の力に川の流れが加わるので、速くなります。川を上るときは、川の流れに押しもどされるので、遅くなります。
- 下りの速さ=静水での速さ+流れの速さ
- 上りの速さ=静水での速さ-流れの速さ
下りは流れに「乗る」のでたす、上りは流れに「押しもどされる」のでひく、と覚えます。
家で説明するときは、動く歩道(空港やショッピングモールにあるもの)を例にすると分かりやすいです。動く歩道の上を進む向きに歩くとふだんより速く進み、逆向きに歩くとなかなか前に進まない。子どもが実際に体験したことのある場面に置きかえると、式の意味がすっと入ります。
例題で解き方を確認しよう
例題1:静水での速さが時速12kmの船があります。川の流れの速さは時速3kmです。この船が36km離れたA町とB町の間を往復します。下りと上りにかかる時間は、それぞれ何時間何分ですか。
まず、下りと上りの速さを出します。
- 下りの速さ:12+3=時速15km
- 上りの速さ:12-3=時速9km
次に、「時間=道のり÷速さ」で時間を求めます。
- 下り:36÷15=2.4時間
- 上り:36÷9=4時間
2.4時間は、0.4時間を分になおすと0.4×60=24分なので、2時間24分です。
流水算では、このように小数の時間が出てくることがよくあります。「0.4時間は何分?」の換算でまちがえる子が多いので、時間の単位換算は別に練習しておくと安心です。
和差算を使う逆算の問題
流水算でよく出るのが、上りと下りの速さから、静水での速さと流れの速さを求める問題です。
例題2:ある船が、36km離れた2つの町の間を、上りは4時間、下りは3時間で進みました。この船の静水での速さと、川の流れの速さは、それぞれ時速何kmですか。
まず、上りと下りの速さを出します。
- 上りの速さ:36÷4=時速9km
- 下りの速さ:36÷3=時速12km
ここで、さきほどの図を思い出してください。下りの速さと上りの速さは、静水での速さを真ん中にして、流れの速さの分だけ上と下にずれています。つまり、下りと上りの差は、流れの速さの2つ分です。
- 流れの速さ:(12-9)÷2=時速1.5km
- 静水での速さ:(12+9)÷2=時速10.5km
確かめると、10.5+1.5=12(下り)、10.5-1.5=9(上り)で合っています。
静水での速さ=(下り+上り)÷2、流れの速さ=(下り-上り)÷2。これは和差算そのものです。
和差算をすでに学んでいれば、「下りと上りの和と差から、静水と流れを求める」と説明すると、多くの子が「あ、和差算だ」と気づきます。この気づきが、単元どうしをつなげて理解する力になります。
応用:流れの速さが変わる問題
例題3:静水での速さが時速15kmの船で、30kmの川を上ります。ふだんの流れの速さは時速3kmですが、大雨のあとで流れの速さが時速5kmになりました。ふだんより何分多くかかりますか。
- ふだんの上りの速さ:15-3=時速12km → 30÷12=2.5時間
- 大雨のあとの上りの速さ:15-5=時速10km → 30÷10=3時間
3-2.5=0.5時間なので、0.5×60=30分多くかかります。
このタイプは、「何が変わって、何が変わらないのか」を整理するのがポイントです。船の力(静水での速さ)と道のりは変わらず、流れの速さだけが変わっています。問題文の数字を、変わるもの・変わらないものに分けて書き出させると、式を立てやすくなります。
エンジンが止まって流される問題
上級の問題では、「途中でエンジンが止まり、しばらく流された」という設定も出てきます。エンジンが止まっている間、船は「流れの速さ」で下流に流されます。上っている途中なら、その分だけ後ろにもどることになるので、残りの道のりが増えます。
この種類は、線分図に「進んだ」「流された」「また進んだ」を順番にかきこんで考えます。基本の関係が身についてから挑戦すれば十分です。
家庭での教え方のコツ
4つの速さを毎回書き出す
問題を読んだら、まず「静水」「流れ」「上り」「下り」の4つを縦に書き、分かっている数を書きこませます。空いているところが、求めるものです。この習慣だけで、何から計算すればよいかが見えるようになります。
速さの3つの式を先に固める
流水算でつまずく子の多くは、流水算そのものより、「道のり=速さ×時間」の使い分けでつまずいています。1人の速さの問題がすらすら解けるかを、先に確かめてください。
単位をそろえる
流水算では、時速と分速、kmとmが混ざった問題がよく出ます。計算を始める前に、単位をそろえる習慣をつけましょう。「時速6kmは分速何m?」(6000÷60=分速100m)のような換算練習も効果的です。
図で「真ん中」を意識させる
上りと下りの速さの真ん中が静水での速さ、という関係は、図をかくと一目で分かります。和差算の逆算問題で迷ったら、図に戻る習慣をつけてください。
よくあるまちがいと、その直し方
流水算でよく見かけるまちがいを、原因と一緒にまとめました。お子さんの答案と見比べてみてください。
| まちがい | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 下りの速さで上りの時間を出している | 4つの速さを書き出していない | 問題を読んだら最初に4つの速さを縦に書く |
| 流れの速さを(下り-上り)で止めている | 差が「流れ2つ分」だと分かっていない | 図で真ん中が静水になることを確認する |
| 2.4時間を2時間40分としている | 小数の時間を分になおせていない | 0.4×60=24分の換算を別に練習する |
| kmとmが混ざったまま計算している | 単位をそろえていない | 計算の前に単位をそろえる欄を作る |
表の2行目のまちがいは、とくに多く見られます。「下りと上りの差は、流れの速さ2つ分」ということを、図の上で指さしながら確認させてください。上りは静水から流れ1つ分へこみ、下りは静水から流れ1つ分ふくらんでいるので、上りと下りの間には流れ2つ分の差があります。
「速さの和と差」でつながる単元
流水算は、旅人算や通過算とも考え方がつながっています。
- 旅人算:2人の速さをたす(出会い)、ひく(追いつき)
- 通過算:電車どうしがすれちがうときは速さをたし、追いこすときはひく
- 流水算:船の速さに流れの速さをたす(下り)、ひく(上り)
どの単元も、「2つの速さが同じ向きならたし、逆向きならひく」という同じ考え方で整理できます。単元ごとにバラバラの公式として覚えるのではなく、この共通点に気づけると、速さの問題全体がぐっと楽になります。家で教えるときも、「これは旅人算のときと同じだね」と声をかけてあげてください。
流水算は何年生で?家での進め方
流水算は、中学受験向けの教材では5年生ごろ、速さの単元の中で出てくることが多い問題です。塾なしで進める場合は、次の順番がおすすめです。
- 速さの3つの式と、単位の換算を確実にする
- 4つの速さの関係を、図と動く歩道のたとえで理解する
- 例題1のような「速さから時間を出す」問題を解く
- 例題2のような「和差算で逆算する」問題を解く
- 流れが変わる問題、エンジンが止まる問題へ進む
1日2〜3問のペースで、4番目まで進めれば、基本問題はほぼ解けるようになります。
練習問題にチャレンジ
問題1:静水での速さが時速10kmの船があります。川の流れの速さは時速2kmです。48kmの川を下るのと上るのに、それぞれ何時間かかりますか。
問題2:ある船が、60km離れた2つの町の間を、上りは5時間、下りは3時間で進みました。この船の静水での速さと、川の流れの速さを求めなさい。
問題3:静水での速さが分速200mの船が、流れの速さが分速40mの川を上ります。4.8km進むのに何分かかりますか。
答え
問題1:下りは10+2=時速12kmなので48÷12=4時間。上りは10-2=時速8kmなので48÷8=6時間です。
問題2:上りは60÷5=時速12km、下りは60÷3=時速20km。静水での速さは(20+12)÷2=時速16km、流れの速さは(20-12)÷2=時速4kmです。
問題3:上りの速さは200-40=分速160m。4.8km=4800mなので、4800÷160=30分です。
問題3は、kmとmをそろえる一手間がポイントです。答えが合わなかったら、単位がそろっているかを最初に確認させてください。
練習プリント(無料)
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まとめ:流水算は「4つの速さの関係」がすべて
流水算は、静水での速さ・流れの速さ・上りの速さ・下りの速さの4つの関係が分かれば解ける問題です。下りはたす、上りはひく。そして、静水と流れは、上りと下りから和差算で求められます。
家で教えるときは、動く歩道のような身近な例で意味を納得させてから、4つの速さを書き出す習慣をつけることを大切にしてください。速さの単元は、旅人算・通過算・流水算と続けて学ぶと、「速さの和と差」という共通の考え方が見えてきます。
速さの基本は旅人算の解き方と図のかき方、逆算で使う考え方は和差算の解き方と3人の問題で解説しています。あわせて読んでみてください。