「速さの問題になると、とたんに手が止まる」「旅人算の解説を読んでも、なぜ足したり引いたりするのか分からない」
中学受験の算数で、多くの子がつまずくのが速さの単元です。その中でも旅人算は、2人(2台)が同時に動くので、頭の中だけで考えると混乱しがちです。
でも、旅人算の考え方は実はシンプルです。ポイントは「2人の間の距離が、1分間にどれだけ変わるか」だけ。この記事では、塾なしで中学受験を目指すご家庭に向けて、旅人算の基本の2パターン(出会い・追いつき)と、池の周りの問題、図のかき方、家での教え方をまとめました。
旅人算とは?どんな問題か
旅人算は、2人以上が動くときに「何分後に出会うか」「何分後に追いつくか」などを求める問題です。
旅人算に入る前に、速さの基本の3つの式を確認しておきましょう。
- 道のり=速さ×時間
- 速さ=道のり÷時間
- 時間=道のり÷速さ
この3つがすぐに使えない状態で旅人算に進むと、どこで間違えたのか分からなくなります。「分速80mで5分歩くと何m進む?」「400mを分速80mで歩くと何分かかる?」のような1人だけの問題がすらすら解けるかを、先に確かめてください。
旅人算のコツは「2人の間の距離が1分間にどれだけ変わるか」を考えることです。
パターン1:出会いの旅人算(向かい合って進む)
例題1:A地点とB地点は1200m離れています。兄はA地点から分速80m、弟はB地点から分速70mで、同時に向かい合って出発しました。2人は何分後に出会いますか。

2人が向かい合って進むと、1分間に兄は80m、弟は70m進みます。2人の間の距離は、1分間に80+70=150mずつちぢまります。
はじめの距離は1200mなので、1200÷150=8分後に出会います。
出会った場所も求めてみましょう。兄は8分間で80×8=640m進むので、A地点から640mの所です。弟は70×8=560m進み、640+560=1200mになるので、答えが合っていることも確かめられます。
向かい合って進むときは、2人の速さを「たす」。これを「速さの和」といいます。
パターン2:追いつきの旅人算(同じ向きに進む)
例題2:弟が分速60mで家を出発しました。弟が300m進んだときに、兄が分速80mで同じ道を追いかけました。兄は出発してから何分後に弟に追いつきますか。

同じ向きに進むときは、兄が1分間に80m、弟が60m進むので、2人の間の距離は1分間に80-60=20mずつちぢまります。
はじめの差は300mなので、300÷20=15分後に追いつきます。
確かめてみると、兄は15分間で80×15=1200m進みます。弟は家を出てから300m+60×15=300+900=1200m進んでいるので、同じ場所にいることが分かります。
同じ向きに進むときは、2人の速さを「ひく」。これを「速さの差」といいます。
なぜ「たす」「ひく」になるのか、家庭での説明のしかた
子どもが混乱しやすいのは、「出会いはたす、追いつきはひく」を丸暗記してしまうことです。丸暗記だと、少しひねった問題で使い分けができなくなります。
家で説明するときは、1分ごとの様子を表にするのがおすすめです。例題1なら次のようになります。
| 時間 | 兄が進んだ道のり | 弟が進んだ道のり | 2人の間の距離 |
|---|---|---|---|
| 0分 | 0m | 0m | 1200m |
| 1分 | 80m | 70m | 1050m |
| 2分 | 160m | 140m | 900m |
| 3分 | 240m | 210m | 750m |
2人の間の距離が、1分ごとに150mずつ減っていくのが分かります。150mは80+70です。同じように例題2でも表を作ると、差が20mずつ減っていくことが目で見て分かります。
実際に親子で廊下や公園を歩いてみるのも効果的です。向かい合って歩くとすぐにぶつかり、同じ向きに歩くとなかなか追いつかない。体で感じた経験があると、式の意味が自然に入ります。
パターン3:池の周りの旅人算
池の周りを回る問題もよく出ます。考え方は出会い・追いつきと同じですが、「1周の長さ」が距離の代わりになります。
例題3:1周1800mの池の周りを、Aさんは分速100m、Bさんは分速80mで、同じ地点から同時に出発します。(1)反対向きに進むと、何分後に初めて出会いますか。(2)同じ向きに進むと、AさんがBさんに初めて追いつくのは何分後ですか。
(1)反対向きに進むと、2人で合わせて1周したときに出会います。1分間に100+80=180mずつ近づくので、1800÷180=10分後です。
(2)同じ向きに進むと、AさんがBさんより1周(1800m)多く進んだときに追いつきます。1分間に100-80=20mずつ差が開くので、1800÷20=90分後です。
池の周りは「反対向きなら2人で1周、同じ向きなら1周の差」で出会う・追いつく、と覚えると整理しやすくなります。
(2)がピンとこない子には、「同じ地点から出発して、Aさんがぐるっと回ってBさんの後ろから追いつく」様子を、紙に円をかいて指でたどらせてみてください。
応用:往復して2回目に出会う問題
基本の3パターンができたら、「往復」の問題にも挑戦してみましょう。
例題4:A地点とB地点は1200m離れています。兄はA地点から分速80m、弟はB地点から分速70mで同時に出発し、2人ともA地点とB地点の間を往復し続けます。2人が2回目に出会うのは、出発してから何分後ですか。
1回目に出会うまでに、2人が進んだ道のりの合計は、AB間の1200mです。そこから2回目に出会うまでには、2人ともそれぞれ相手の出発地点まで行って引き返してくるので、2人の道のりの合計は、さらにAB間の2つ分(2400m)増えます。
つまり、2回目に出会うまでに2人が進んだ道のりの合計は、1200×3=3600mです。2人は1分間に合わせて80+70=150m進むので、3600÷150=24分後に2回目に出会います。
確かめてみます。兄は24分で80×24=1920m進みます。1200mでB地点に着き、そこから720m引き返すので、A地点から1200-720=480mの所にいます。弟は70×24=1680m進み、1200mでA地点に着いて、そこから480m進むので、やはりA地点から480mの所です。同じ場所にいるので、答えは合っています。
往復の問題は「2人の道のりの合計が、AB間の何本分になったか」を考えると解けます。
この問題は、線分図を何段にも重ねてかくか、ダイヤグラムをかくと理解しやすくなります。いきなり式で解こうとせず、まずは図で「1回目→それぞれ折り返し→2回目」の動きをたどらせてください。
図のかき方:線分図とダイヤグラム
旅人算では、図をかけるかどうかで正答率が大きく変わります。
線分図(まずはこれ)
まっすぐな線を1本引き、両はしに出発地点を書きます。それぞれの人の進む向きを矢印で書き、速さを矢印の上に書きます。最後に、分かっている距離を線の下に書きます。この記事の2つの図がその例です。
最初のうちは、「出発地点」「向き」「速さ」「距離」の4つを書いてから式を立てる、というルールを決めておくと、図をかく習慣がつきます。
ダイヤグラム(5〜6年生向け)
横じくに時間、たてじくに道のりをとったグラフをダイヤグラムといいます。途中で止まったり、引き返したりする複雑な問題で役立ちます。中学受験向けの教材では高学年で出てくることが多いので、まずは線分図で基本の2パターンを確実にしてから取り組めば大丈夫です。
よくあるつまずきと対策
- 単位がそろっていない:分速と時速、mとkmが混ざっていないか、最初に確認する
- 「同時に出発」かどうかを読み落とす:例題2のように時間差がある問題は、先に出た人が進んだ距離を出してから考える
- 出会った「時間」と「場所」を取り違える:何を聞かれているかに線を引かせる
- 速さの和と差を逆にする:向かい合う?同じ向き?を図の矢印で確認する
特に単位の取り違えは、分かっているのに点を落とす典型的なミスです。「分速○mを時速に直すと?」のような単位換算の練習も、旅人算と並行して進めておくと安心です。
旅人算の家での進め方
旅人算は、速さの基本ができてから取り組む単元です。中学受験向けの教材では、5年生前後で速さの単元とあわせて出てくることが多いです。塾なしで進めるなら、次の順番がおすすめです。
- 速さの3つの式(道のり・速さ・時間)を1人の問題で練習する
- 例題1の出会いの問題を、表と線分図で解く
- 例題2の追いつきの問題を、同じように表と線分図で解く
- 出会いと追いつきの問題を混ぜて出し、「たす?ひく?」を図で判断させる
- 池の周り、往復の問題へ進む
4番目の「混ぜて出す」ステップがとても大切です。同じパターンの問題ばかりを続けて解くと、問題文を読まなくても解けてしまい、テストで別のパターンが出たときに崩れます。1日3問程度で、出会い・追いつき・池の周りを混ぜて出すと、使い分けの力がつきます。
練習問題にチャレンジ
問題1:家と駅は2400m離れています。姉は家から駅へ分速70mで、妹は駅から家へ分速50mで、同時に出発しました。2人は何分後に出会いますか。また、出会うのは家から何mの所ですか。
問題2:弟が分速60mで家を出てから10分後に、兄が分速90mで同じ道を追いかけました。兄は家を出てから何分後に弟に追いつきますか。
問題3:1周1200mの池の周りを、Aさんは分速70m、Bさんは分速50mで、同じ地点から同時に出発します。反対向きに進むと何分後に出会いますか。同じ向きに進むと、AさんがBさんに追いつくのは何分後ですか。
答え
問題1:1分間に70+50=120mずつ近づくので、2400÷120=20分後に出会います。姉は70×20=1400m進んでいるので、家から1400mの所です(妹は50×20=1000m、合わせて2400m)。
問題2:兄が出発するとき、弟はすでに60×10=600m先にいます。1分間に90-60=30mずつ差がちぢまるので、600÷30=20分後に追いつきます(兄は90×20=1800m、弟は60×30=1800mで同じ場所)。
問題3:反対向きは1200÷(70+50)=1200÷120=10分後。同じ向きは1200÷(70-50)=1200÷20=60分後です。
問題2は、例題2と同じ追いつきのパターンですが、「10分後」という時間で差が出されています。先に「はじめの差は何m?」を求める一手間がポイントです。
練習プリント(無料)
この記事の内容をたしかめる「初級」の練習プリントです。問題1ページと、解答・要点まとめ1ページのA4のPDFです。印刷して使ってください。
中級の問題と「要点まとめ」がついたセット(10単元・A4で62ページ)は、noteで販売しています。この単元は「算数・特殊算パック①」に入っています。
まとめ:旅人算は「1分間に距離がどう変わるか」
旅人算は、2人の間の距離が1分間にどれだけ変わるかを考える問題です。向かい合って進むなら速さをたし、同じ向きに進むなら速さをひく。池の周りなら、反対向きは2人で1周、同じ向きは1周の差。この整理ができれば、基本問題はほぼ解けます。
家庭で教えるときは、公式を覚えさせる前に、表や線分図、実際に歩いてみる体験で「なぜたすのか、なぜひくのか」を納得させることを大事にしてください。納得してから練習した方が、通過算や流水算など、このあとに続く速さの単元にもスムーズにつながります。
算数全体のつまずきが気になるときは、中学受験の算数についていけない原因を見直すと、立て直し方がぐっと変わってくるも参考にしてください。前の単元のつるかめ算の解き方と教え方もあわせてどうぞ。